折原一「遭難者」

登山記録、山岳資料、死体検案書などが収められた追悼集に秘められた謎、謎、謎…。

遭難者
遭難者折原 一

角川書店 2000-05
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おすすめ平均 star
star内容自体は★4くらいなのだが・・・・・・・
star構成の面白さはあるのですが
starここまで凝っているとは…

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北アルプスの白馬岳から唐松岳に縦走中、不帰ノ嶮という難所で滑落死した青年・笹村雪彦。彼の山への情熱をたたえるため、彼の誕生から死までを追悼集がまとめられた。
この本は、その「笹村雪彦追悼集」という体裁である。登山記録、山岳資料、死体検案書、地図、絵葉書、写真、追悼文などで構成されている。まずこの装いがトリッキーである。


でも、読者は思うだろう、はたして、これのどこがミステリー小説なのか?


追悼集には、息子を亡くした母親の手記もつづられている。息子の足跡をたどる母、だが彼女は息子の死に秘められたものがあることに気づく。何故、この手記がこの追悼集に収められているのか。これも仕掛けの一部である。そして更なる悲劇が・・・。


ミステリーとしては、少々弱い(2時間サスペンスのような解決)が仕掛けを楽しむ本である。凝りに凝ったつくりの「追悼集」、本自体が一種の叙述トリックになっている。

※函に2冊の追悼集が入っている珍しい文庫本。
(採点:★★★1/2)