芦辺拓「時の密室」

時の密室 (講談社文庫)
時の密室 (講談社文庫)芦辺 拓

講談社 2005-03
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明治政府の雇われ技師エッセルが謎の館で見た殺人死体とその消失。学園紛争の末期、医大生・氷倉がいるはずのない場所で遭遇した友人の刺殺体。二つの迷宮入り事件が現代の冤罪事件を調べる素人探偵・森江春策の前に立ち現れ、密室の謎の全貌が徐々に連鎖してゆく。

重要な小道具として登場するM.C.エッシャーの絵のように「明治時代」「昭和45年」「現在」の事件が複雑に絡み合い、まさに「だまし絵」のような展開で、ひとつの答えが導き出されていく。

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※作中の明治政府の雇われ技師エッセル(実在の人物)とは、版画家M.C.エッシャーの父親のことである。


雇われ技師エッセルと巡査を主人公とする「明治」パートがいい。ディテールの積み重ねで大阪・川口にあった外国人居留地を生き生きと蘇えらせる。明治政府の雇われ外国人たちの生活ぶりまで、まるで見てきたように描かれる。山田風太郎の「明治開化もの」のように虚実入り混じりの明治青春ストーリー、それがまた作者の計算された「仕掛け」だったりもする。


昭和45年の事件の舞台、そして事件の解決の場となる「安治川トンネル」。
全国でも珍しい川の下を通る「河底トンネル」。
明治の事件の重要な舞台となる「安治川橋」がかつてあった場所。


(採点:★★★★1/2)