恩田陸「不安な童話」

ミステリ、SF、ホラー、ファンタジー、青春小説と多ジャンルで活躍する恩田陸の初期作品(1994年発表)。題材は、当時大ブームだった「サイコ・サスペンス」。「生まれ変わり」が重要なモチーフになっている。

不安な童話
不安な童話恩田 陸

新潮社 2002-11
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おすすめ平均 star
star恩田的ミステリー
star封印された記憶
starタイトルに惹かれて。

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私は知っている、このハサミで刺し殺されるのだ―。強烈な既視感に襲われ、女流画家・高槻倫子の遺作展で意識を失った古橋万由子。彼女はその息子から「25年前に殺された母の生まれ変わり」と告げられる。時に、溢れるように広がる他人の記憶。そして発見される倫子の遺書、そこに隠されたメッセージとは…。犯人は誰なのか、その謎が明らかになる時、禁断の事実が浮かび上がる。

果たして、本当に万由子は高槻倫子の「生まれ変わり」なのか? モダン・ホラーのような展開だが、物語の最後にすべての謎は論理的に解き明かされる。
この作品の発表時は、ちょうど鈴木光司「リング」が文庫化され大ベストセラーになっていた頃。「リング」のような展開をたどるが、こちらはホラーから一転ミステリー小説へとアクロバティックな着地をみせる。

恩田陸のその後の多彩な活躍の萌芽は、この時点で垣間見られる。
(採点:★★★★☆)